腰痛はなぜ起こるのか?

腰痛は心理的な要因も大きく関わっていると言われ、本当の原因を一つに特定できていないのが現状です。なのですが、骨や筋肉のつくりの観点から原因を見ていくと、腰椎に外からの力がかかって腰痛の原因になっていることがあります。

腰椎とは?腰痛の原因とは?

腰椎とは背骨の腰の部分にあたる部分で5つの骨でできています。この腰椎に2種類の外からの力が掛って腰痛の原因になることがあります。

①曲がったところに上下からの圧力がかかる

②捻る力がかかる

それぞれの力についてお話したいと思います。

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腰椎は脊椎の一部で腰の部分の5つの骨で構成されています。

①曲がったところの上下からの圧力

まず最初の力は、腰椎が屈曲したところにかかる上下からの圧力です。腰椎が屈曲している状態とは、腰が曲がって前かがみの状態をイメージして下さい。腰椎は上半身の重みの大部分を支えなければなりません。腰椎が屈曲した状態で、上半身の重さを支えるために上下からの圧力がかかると問題が起こります。

曲がったところに上下からの圧力がかかると起こる椎間板ヘルニア

腰椎が屈曲している状態で、さらに、重いものを手に持つなどしてさらに圧力をかけてしまうなどすると、椎間板という腰椎の骨と骨の間にあるクッション材のようなものがあるのですが、その椎間板が後方に押し出されて、腰椎の後ろに走る神経根を圧迫してしまし、しびれや痛みの自覚症状になります。これが椎間板ヘルニアです。これが一般的に「腰を丸めたまま、重い物を持ち上げると腰に悪い」と言われる所以です。

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椎間板ヘルニアのMRI画像。赤丸部分が圧迫された神経根(写真:Wikipediaからの転載)

継続的な腰椎の曲がりによって起こる圧迫骨折

また、高齢者の腰椎の圧迫骨折も全く同じメカニズムで見られる現象で、過度の腰椎屈曲により腰椎の椎体という本体部分の前方が継続的に圧迫されて骨折します。腰椎の椎体のお腹側の前方部分は構造的にもろく上下に圧迫されて潰れるように骨折をしてしまうのです。
この椎体骨折は、高齢になるほど高い割合で多くの人に起こっています。年を取って背中や腰が曲がったり、背が縮むのは仕方のないことと思われがちですが、これらは椎体の圧迫骨折によっておこっていることなのです。

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圧迫骨折が起こる様子。上下からの圧力で椎体のもろい部分が骨折してしまう

日常的な姿勢が、日常的な腰椎の曲がりの原因

椎間板ヘルニアにしても、腰椎の圧迫骨折についても、腰椎が屈曲したまま(曲がったまま)の状態で固定してしまうのがまずいということがお分かり頂けるものと思います。その腰椎を屈曲したままの状態にしてしまっているのが、日常的な姿勢なのです。

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日常的にこんな姿勢をとっているとすると、腰椎は常に屈曲した状態になります。

姿勢を悪くする裏もものこり

日常の姿勢を考える上で、特に注目しなければならないのがハムストリング(裏ももの筋肉群)です。裏ももの筋肉は骨盤に接続しています。そして、この裏ももの筋肉が凝って収縮すると、骨盤が後ろに引っ張られます。骨盤が後ろに引っ張られると、骨盤は後傾して、体全体の重心が後ろに移るので、身体はバランスをとるために自動的に頭部を前に出します。その結果、腰椎(背骨の腰の部分)と、胸椎(背骨の胸の部分)は屈曲した(曲がった)状態で常にいることになります。裏ももは長時間座っていると圧迫されてどうしてもこりやすい筋肉なので、裏もものこりについては気をつけたいところです。

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ハムストリングは骨盤を後ろ側に引っ張っています。もし、ハムストリングがこっているとすると日常的に骨盤は後ろに引っ張られ、腰椎は屈曲した状態で長くいることになります。

ここまでのまとめ:①曲がったところの上下からの圧力

腰椎が曲がったところに上下からの圧力がかかることによって起こる腰痛についてこれまでの話をまとめました。

長時間座ることで裏ももの筋肉が座面から圧迫を受け硬くなる

骨盤が裏ももの筋肉に引っ張っられて後ろに倒れる

頭を前に出してバランスをとる

腰椎が日常的に屈曲する姿勢に

重いものを持つなどして、強い上下からの圧がかかる

椎間板が押し出されてヘルニアに

長い期間をかけて、上下からの圧力がかかり続ける

加齢と共に腰椎の椎体のもろい部分が骨折し、背骨が曲がり身長が縮む

②捻る力

2つ目の大きな腰痛の原因は腰椎にかかる強い捻る力です。腰椎自身には捻ることに対する可動域がほとんどありません。もし、腰椎に僅かでも捻られる力が長期間加わると腰椎は疲労骨折を起こしてしまいます。そのメカニズムを見て行きましょう。

腰椎は回旋する(捻る)のが苦手

解剖学的に腰椎は回旋する(捻る)可動域が殆どありません。野球の指導でよく「もっと腰を捻れ!」という檄が飛びますが、厳密には捻っているのは腰椎から見ると上にある「胸椎(背骨の胸の部分)」と、腰椎から見ると下にある「股関節」です。胸椎と股関節が回旋することで、腰を捻っているように見えるのですが、腰椎自身はほとんど回旋することができません。

股関節と胸椎が回らなくなると、捻る力は直接腰椎に

股関節と胸椎の回旋可動域が減少すると、本来回旋能力を持たない腰椎に捻る力が掛ってしまいます。野球選手に最も多い腰痛の「すべり症」と「分離症」は捻る力が継続的に働いた疲労骨折であるという事が広く知られています。腰椎にかかる捻る力を生じさせないためには、本来回旋の役割を担う股関節と胸椎の可動性を充分獲得する必要があります。

胸椎の回旋可動域を狭くしている胸椎の屈曲位での固定

それでは、胸椎の回旋可動域が狭くなってしまっているのはなぜでしょう?これは日常的に前かがみの姿勢になっていて、胸椎が屈曲した(前かがみの方向に曲がった)状態で長時間固定されてしまっていることが大きな原因として挙げられます。胸椎周辺は肩こりに代表されるように硬くなりやすいのが難点です。先ほど『①曲がったところの上下からの圧力』のところで触れたように、裏もものこりがあると骨盤を後傾させ、後ろにかかった重心を戻すために頭の位置を前に動かすため胸椎は屈曲した状態で長時間いることになります。こういった日常の姿勢が、胸椎の可動域を損なっているのです。

股関節が硬くなると回旋しにくくなる

股関節は太ももと骨盤を繋いでいる関節です。
骨盤が後ろに傾くと連鎖的に太ももは外側に捻られます。逆に骨盤が前に傾くと太ももは内側に捻られます。
そして、股関節の曲げ伸ばしをすると単純に曲げ、伸ばしが行われるばかりでなく、同時に関節が回る動作が行われます。股関節が伸展すると股関節は外旋(がいせん)、すなわち「がに股」になる方向に回転します。また、股関節が屈曲すると股関節は内旋(ないせん)、すなわち「内股」になる方向に回転するという運動連鎖があります。股関節が屈伸しないで周囲の筋肉が固くなってしまうと、股関節が回旋する機会も無くなってしまうのです。長時間のデスクワーク中に、床に落ちた物を拾おうとした時にギックリ腰が起きやすいのもこういった状態から発生していると考えられます。

ここまでのまとめ:②捻る力

腰椎に直接捻る力が掛ってしまうことによって起こる腰痛についてこれまでの話をまとめました。

胸椎の屈曲位での固定

胸椎の回旋可動域が狭くなる

股関節の周りの筋肉が硬くなる

股関節の屈伸がなくなり、股関節の回旋もしにくくなる

体を捻ろうとすると、本来回旋すべき胸椎・股関節が回旋しない

捻る力が直接腰椎にかかる

「すべり症」や「分離症」原因になる

腰痛をどう扱っていくか

それでは、腰痛になってしまった場合どのように扱っていったらよいのでしょうか?腰痛が起こるメカニズムを踏まえ、その方法についてロコムーブとしてのお話をしたいと思います。

腰椎を無理な力から解放する

腰痛の治療には様々な理論や手法がありますが、ロコムーブとしてはもとの原因である腰椎にかかる「①曲がったところへの上下からの圧力」、「②捻る力」から軽減し、できるだけ解放してあげることが大切だと考えています。

①腰椎を曲がったままの姿勢にしない
②胸椎、股関節の可動域を広げる

腰椎をまがったままにしてしまう裏もものこりをとる

筋肉運動の際に反対の動きをする筋肉を拮抗筋と呼びます(参考:Wikipedia)。筋肉が緊張する際には、その筋肉の拮抗筋が無意識で弛緩する作用があり、これを相反抑制と言います。この相反抑制はある筋肉を緊張させれば、その拮抗筋にあたる筋肉を弛緩させることができるので、スポーツストレッチの専門家や、理学療法士の間では活用されている考え方です。体の筋肉で拮抗筋にあたる筋肉は沢山ありますが、そのひとつとして裏ももの筋肉群(ハムストリング)と、広背筋がそれぞれ拮抗筋の関係にあります。広背筋を活動させるとハムストリングが弛緩することが自動的に起こるのです。
広背筋は骨盤は引き上げ、ハムストリングは骨盤を後ろに引っ張る動きをしています。広背筋が活動すると、広背筋が骨盤を引き上げるだけでなく、拮抗筋であるハムストリングが弛緩をするので骨盤を後ろに引っ張る力が弱まり、骨盤はなおのこと引き上げられます。逆にハムストリングが緊張すると骨盤が後ろに引っ張られるだけでなく、拮抗筋である広背筋が弛緩するので骨盤はなおのこと後ろに引っ張られるのです。

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ハムストリング(裏ももの筋肉群)です。骨盤に接続して、骨盤を後ろに引っ張ります。こってしまうと特に骨盤を後ろに引っ張る力がかかります。

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ハムトリングの拮抗筋にあたる広背筋です。広背筋が活動するとハムストリングは緩みます。

この写真は、ロコムーブのトレーニングの前後で体を前にどこまで倒せるかを比較したものです。広背筋を活動させることで、ハムストリングがじんわりとした緊張状態から解放されて体をぐっと前に倒せるようになっていることが分かります。

「背中のアーチ」を作る

胸椎が柔軟性を失ってしまっている時に典型的なのは胸椎が屈曲した状態で曲がってしまっている状態です。胸椎を伸展して、背中がアーチ上になるような姿勢を作ってあげることが大切です。

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この写真は胸椎が屈曲している状態の写真です。骨盤が後傾してしまい、重心が後ろに位置しています。そして、後ろに倒れないようにと頭を前に突き出すことで全身のバランスを取っている状態です。定常的にこのような姿勢をとっていると、胸椎は屈曲したまま周りの筋肉が固まってしまいます。こうなると胸椎は柔軟性を失って、可動域が狭まってしまいます。

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この写真は胸椎が伸展した状態で立っているものです。骨盤が立ち、重心が全体的に前にかかっています。胸が自然と開き、首は肋骨の真上に位置し、うなじが引き上げられるようにまっすぐ上に伸びています。背中に注目すると背中にアーチができています。胸椎はうまく伸びているのが分かります。

股関節の屈伸

股関節の屈伸の可動域を高めることで股関節の回旋可動域を広げることができます。それというのも股関節は単純に屈伸をしているだけではなく、屈曲するときには股関節は内股になる方向に回転をしています。また反対に進展するときには股関節はがに股になる方向で回転します。即ち、股関節の屈伸の可動域を広げることは股関節の回旋の可動域を広げることにもつながる訳です。

やってみよう!ロコムーブ 基本3種目② -カンガルー-

それでは、広背筋を正しく活動させ、胸椎や股関節を柔軟にするロコムーブ・メソッドとは一体どのようなものなのでしょうか?ロコムーブ・メソッドでは3つの基本的な動作を、基本3種目と呼んでいます。

ここでは、2番目の種目であるカンガルーという動きを紹介して行きます。この画面をパソコンや、スマホでご覧になっていらっしゃると思いますが、是非、動画を見ながらご自身でも身体を動かしてみてください。

カンガルー

カンガルーは下半身の中心である股関節を曲げ伸ばしながら、ハムストリング、内もも、ふくらはぎ、お尻の筋肉を弛緩させたり、緊張させていきます。その動きに連動して、広背筋の活動を高めます。

通常のスクワットは「ひざの関節の曲げ伸ばし」を中心に行っていますが、カンガルーでは「股関節の曲げ伸ばし」をメインとするのが大きな違いです。

主な効果

  • 肩こり・腰痛を改善
  • 身体バランスの向上
  • 腹囲が減る(肋骨と骨盤の位置関係が変化するため)
  • 下半身から全身の血流アップ
  • 脚力強化

カンガルーの動きで腰に痛みを感じる場合

カンガルーは基本種目の中では腰に痛みを感じやすい種目です。カンガルーで腰に負担を感じる方は上半身と下半身の連動がうまくとれていない場合が多いです。
その連動性を司るのが「背中のアーチ」です。「腰」ではなく「背中」というところがポイントです。
と捉えてください。背中のアーチをつくるには、肩甲骨や鎖骨を開く可動域が必要になります。フェニックスをカンガルーの前に導入しているのは、カンガルーで背中のアーチを作りやすくする為というのも理由の1つです。
カンガルーで肩甲骨を寄せて胸が開けるようになると、腰ではなく背中にアーチが生まれて腰への負担は軽減します。
しかし、この背中のアーチは一朝一夕には身につかないので、痛みがでる方はリトルカンガルーという腰くらいの高さの机に手をついて行う種目がオススメです。
この種目は上半身の重さをテーブルに預けられるので、腰に負担が掛かる方には有効です。それでも、どうしても痛みが出てしまう方は中止してフェニックスを中心に肩甲骨や鎖骨の可動域を広げることに集中してみてください。

リトル・カンガルー

骨盤、股関節の可動域を拡げ、日常生活で硬くなりがちな裏もも(ハムストリングス)、内もも、ふくらはぎなどの筋肉を伸ばします。

主な効果

  • 腰痛改善(腰椎への負担が減ります)
  • 姿勢矯正(骨盤が立ちあがります)
  • 腹囲が減ります(肋骨と骨盤の位置関係が変化します)
  • 歩く動作が楽になります(重心位置が高くなります)