認知症の要因とは?

認知症は一度なってしまうと元の状態に戻らない病気で、なるべく認知症になることなく過ごしたいものです。ここでは、高齢者で認知機能が低下しやすい人の特徴として挙げられる「歩幅の狭さ」に注目し、ロコムーブとして認知症の予防に向けてできることをお話したいと思います。

歩幅との関係が深い認知症

東京都健康長寿医療センター研究所によりますと、認知機能の低下とその他の要素との関連を追跡調査したところ、年齢が高いことや、一人暮らしといった社会的・人口的な要因に加え、血液中の栄養状態を表す数値が低いこと、歩幅が狭いことが関連していることがわかっています。歩幅が広い人に比べ、歩幅が狭い人は認知機能低下のリスクは3倍もあります(リンク:東京都健康長寿医療センター研究所)。

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東京都健康長寿医療センター研究所 老人研NEWS No.250より

重心が低くなると自然と歩幅は狭くなる

それでは、高齢者にとって歩幅を狭くしてしまっている原因はなんでしょう。それは、重心が低くなってしまっていることです。歩幅は地面と身体重心位置との回転半径によって決まります。立った時の骨盤の位置が低くなると自然と足の回転半径が短くなり、歩幅が短くなってしまいます。

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歩幅は地面と身体重心位置との回転半径によって決まる

重心を低くしてしまっている猫背の姿勢

重心が低くなってしまう高齢者の典型的な姿勢は下の写真のような姿勢です。

高齢者姿勢

骨盤が後傾してしまい、重心が後ろに位置しています。そして、後ろに倒れないようにと頭を前に突き出すことで全身のバランスを取っている状態です。定常的にこのような姿勢をとっていると、ひざが曲がってしまい股関節の位置が低くなり、そこから足が大きく伸びず歩幅が短くなってしまうのです。

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ひざが曲がってしまい、重心の位置が低くなっている。脚の回転半径が短くなって歩幅が狭くなる姿勢

猫背の姿勢の原因になっている裏もものコリ

日常の姿勢を考える上で、特に注目しなければならないのがハムストリング(裏ももの筋肉群)です。裏ももの筋肉は骨盤に接続しています。そして、この裏ももの筋肉が凝って収縮すると、骨盤が真下に引っ張られます。骨盤が下向きに引っ張られると、骨盤は後傾して、体全体の重心が後ろに移るので、身体はバランスをとるために自動的に頭部を前に出します。その結果、腰椎(背骨の腰の部分)と、胸椎(背骨の胸の部分)は屈曲した(曲がった)状態で常にいることになります。裏ももは長時間座っていると圧迫されてどうしてもこりやすい筋肉なので、裏もものコリについては気をつけたいところです。

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ハムストリングは骨盤をに真下に引っ張っています。もし、ハムストリングが凝っているとすると日常的に骨盤は下向きに引っ張られ、膝が曲がって股関節の位置が下がります。

骨格上も背が低くなっている

また、日常的に猫背の姿勢をとることにより、骨格自体も背が低いものになってしまいます。それは、腰椎(背骨の腰の部分)の圧迫骨折です。腰椎屈曲(腰が曲がっている状態)により腰椎の椎体という本体部分の前方が継続的に圧迫されて骨折します。腰椎の椎体のお腹側の前方部分は構造的にもろく上下に圧迫されて潰れるように骨折をしてしまうのです。この椎体骨折は、高齢になるほど高い割合で多くの人に起こっています。年を取って背中や腰が曲がったり、背が縮むのは仕方のないことと思われがちですが、これらは椎体の圧迫骨折によっておこっていることなのです。

実際、高齢者の方にアレンジしたロコムーブの種目を行ってもらうと、1〜2cm身長が伸びる方も少なくありません。

ここまでのまとめ

認知症と歩幅の関係を中心に、認知症の原因としてここまでの話をまとめます。

長時間座ることで裏ももの筋肉が座面から圧迫を受け硬くなる

骨盤が裏ももの筋肉に引っ張っられて後ろに倒れる

身体が後ろに倒れないように、頭を前に突き出してバランスをとる

いわゆる猫背の姿勢になる

股関節の位置が下がる

股関節を中心とした足の回転半径が短くなる

歩幅が短くなる

認知機能が低下する

認知症予防のために

認知機能の低下は歩幅が短くなっていることとの関係に注目し、歩幅を伸ばして認知機能の低下を防ぐためにできることをお話します。

歩幅を伸ばすための重心が高い姿勢作り

認知症を予防するためには日常的に歩幅が伸びるような重心が高い姿勢で歩いている必要があります。重心が高い姿勢とはどのような姿勢なのか、下の二つの写真を見てみましょう。

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この写真は重心が低い状態の写真です。骨盤が後傾してしまい、重心が後ろに位置しています。そして、後ろに倒れないようにと頭を前に突き出すことで全身のバランスを取っている状態です。結果的にひざが曲がってしまい、股関節の位置が下がって、歩幅が短くなる姿勢になっています。

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この写真は重心が高い状態の写真です。骨盤が立ち、重心が全体的に前にかかっています。胸が自然と開き、首は肋骨の真上に位置し、うなじが引き上げられるように(軽くあごを引いた状態)まっすぐ上に伸びています。結果的にひざが伸びて、股関節の位置が上がって、歩幅が伸びる姿勢になっています。

腰をまがったままにしてしまう裏もものコリをとる

筋肉運動の際に反対の動きをする筋肉を拮抗筋と呼びます(参考:Wikipedia)。筋肉が緊張する際には、その筋肉の拮抗筋が無意識で弛緩する作用があり、これを相反抑制と言います。この相反抑制はある筋肉を緊張させれば、その拮抗筋にあたる筋肉を弛緩させることができるので、スポーツストレッチの専門家や、理学療法士の間では活用されている考え方です。体の筋肉で拮抗筋にあたる筋肉は沢山ありますが、そのひとつとして裏ももの筋肉群(ハムストリング)と、広背筋がそれぞれ拮抗筋の関係にあります。広背筋を活動させるとハムストリングが弛緩することが自動的に起こるのです。
広背筋は骨盤を引き上げ、ハムストリングは骨盤を後ろに引っ張る動きをしています。広背筋が活動すると、広背筋が骨盤を引き上げるだけでなく、拮抗筋であるハムストリングが弛緩をするので骨盤を後ろに引っ張る力が弱まり、骨盤はなおのこと引き上げられます。逆にハムストリングが緊張すると骨盤が後ろに引っ張られるだけでなく、拮抗筋である広背筋が弛緩するので骨盤はなおのこと後ろに引っ張られるのです。

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ハムストリング(裏ももの筋肉群)です。骨盤に接続して、骨盤を後ろに引っ張ります。こってしまうと特に骨盤を後ろに引っ張る力がかかります。

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ハムトリングの拮抗筋にあたる広背筋です。広背筋が活動するとハムストリングは緩みます。

この写真は、ロコムーブのトレーニングの前後で体を前にどこまで倒せるかを比較したものです。広背筋を活動させることで、ハムストリングがじんわりとした緊張状態から解放されて体をぐっと前に倒せるようになっていることが分かります。

やってみよう!ロコムーブ 基本3種目① -フェニックス-

それでは、広背筋を正しく活動させることで、重心の高い姿勢を作るロコムーブ・メソッドとは一体どのようなものなのでしょうか?ロコムーブ・メソッドでは3つの基本的な動作を、基本3種目と呼んでいます。まずは、最初の種目であるフェニックスという動きから紹介して行きます。この画面をパソコンや、スマホでご覧になっていらっしゃると思いますが、是非、動画を見ながらご自身でも身体を動かしてみてください。

フェニックス

フェニックスは胸椎を中心として背骨を伸展させ、肩甲骨周辺の緊張を解きながら、広背筋の活動を高める運動です。広背筋の活動を高めることでその拮抗筋である僧帽筋がゆるむことを狙っています。

立って行うことにより骨盤との連動性を引き出し、自然と骨盤を引き上げます。

主な効果

  • 肩こり・腰痛を改善
  • 姿勢を矯正
  • 呼吸がラクになる、集中力アップ(胸部が高まるため、息が吸いやすい)
  • 身体にしなりが生まれる(胸椎の伸展力が高まるため)
  • 背骨のアンチエイジング

歩くことを楽しむ

歩幅も大切ですが、何よりも歩くことを楽しんで頂ければと思います。ひざや腰が痛くなったりすると億劫に思われるものと思いますが、お体に無理のない範囲でご自身で歩いて季節の移り変わりを楽しんで頂きたいものです。